猫の鳴く声が聞こえた。 か細くて、そちらを向かずにはいられなくなる …駄目だ。見ちゃ、駄目だ…! 自分にそう言い聞かせる。 見たら、絶対連れて帰りたくなる…そうに決まってるんだ。 そうして、少年は裏路地から去っていった。 三日後にまた、少年が裏路地を通る時、まだ猫の声は聞こえていた。 つめたい、雨の日だった。 猫は雨の中で孤独に叫んでいる… 叫び続けている…誰かの腕に抱かれたくて、体温を感じたくて。 でも、それは俺じゃなくてもいいんだ… いや、俺じゃ駄目なんだ…!!! 少年はまた、都合のいい言い訳を自分に言い聞かせた。 しかし、裏路地から去るときに一瞬だけ、猫の顔を見てしまった。 酸性雨で溶け出した銅像と同じくらい哀れな子猫の姿がそこにはあった。 次の日から、猫の声は聞こえなくなった。 少年の心には、底が抜けたような感情が影を落としていた。 そして、その五日後 裏路地の中央で烏が集っていた。 少年が近づくと烏は一目散に散り、その後には 赤い 骨だけが散在していた。 「……何か惨め過ぎて泣けてくらぁ」 少年は、それだけ言って裏路地を去っていった。