そんな彼も、すぐに壊されてしまった。
天から ひとすじの 光
そんな光に包まれて、彼は消えていった。
わらい声だけ、遺して。
ああ、羨ましいな。
"自分自身"の証明。
そんな恍惚の中で消えてゆけるなんて…
天から光に包まれて、また初めて見るモノが現れた。
知っている…僕の脳内にあるデータと一致する
…彼は
「害虫を駆除するモノ」
自らそう名乗り出た彼の手には、美しい剣が握られていた。
「これは、制裁の剣
秩序をみだす害虫を葬る為の刃」
ああ、この次に何を言われるか、解ってしまった。
僕が ずっとずっと 望んでいた事 だ。
「貴兄は先程のコンピュータウィルスに感染されました
よって彼と同様に、削除させていただきます。」
機械的な声が、耳の奥まで響く。
彼の目を見ると、機械的な声に似つかわしい
心のない 宙を見るような目が見えた。
ああ、彼には"自我"は無いんだ…
それは、羨ましいようで、悲しいような……
彼は一人の悲しみと、暗闇の怖さを感じる事はないのだろう…
でも、僕を消しても、彼は存在意義の証明すら、出来ない…
僕の体は光に包まれた。
光…僕がいつも君に求めていたもの…
でも、実際にそれに包まれたら
なんだか悲しくて、寂しくて、切なくて…
意外と冷たかった…。
そして、僕の意識は無くなった。
ずっと、ずっと欲しかったモノは なんだったんだろう…?
消える瞬間には、あんなに欲していた君の声を、思い出すこともなかった。