次の瞬間に、僕は壊れ始めていた。



肥大化し過ぎた脳みそは溶け出して
付け焼刃の翼は砕けていった。


ああ、知ってる。
これは…

「……なんで…
 なんで、あなたは」

僕がそう言うと、彼はわらった。
悪魔の微笑で、心の底からわらった。


「なんでって?
 君こそ、そんなに大きな頭脳を持っているのに、なんで気付かなかったんだい?」

彼はわらいながら言った。


僕の手が、彼から離れた。


いや、離れたんじゃない。
僕の手が、彼が触れていた部分から徐々に壊れていったんだ。


「もう、完璧に感染しちゃったみたいだね。」


ああ、もう助からない。
僕は壊れる。
彼はわらい続ける。


僕の不幸を笑っているんじゃない。
彼は彼自身の幸福を噛締めているんだ。


彼は今、彼の存在意義を証明した。
僕を破壊する事で、証明したんだ。


「ありがとう。
 君が引っ掛かってくれたお陰で、俺は俺を証明できた。
 俺の"生きる意味"を達成できたんだ。」









きっと、それは僕が初めて聞いた、彼の心からの声だったんだろう。

  





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