よく思い出せば、僕に禁じられた行為は、消滅だけだったんだ。

いつからか、その消滅できない事が、僕の全てを縛っているように感じていた。


でも、違ったんだ。


僕は自由だ。
自分の好きなコトを考えられるし
思いのままに動かせる手足だって作れる。
やろうと思えば、翼だって作れるんだ!


「全く…どう見たって、君は自由じゃないか。
 それなのに、何もしないなんて勿体無さすぎだ!」
彼は笑顔で言う。

「…そうなんだろうけど、でも何をしたいのか、全くわからないんだ。」

僕は、何も知らない。
今まで"自分"と"君"しか知らなかったんだ。

だから、君が全てだった。
君が僕に教えてくれた事しか知らない。

そんな汚物の様な知識の集合体の中に、「自分のやりたいこと」の答えがあるわけないんだ。


「じゃあ、世界と繋がろう。そうすれば、君がやりたいこともきっと見つかるさ!」

彼は、僕の肥大化した脳内にも無いアイデアを出してきた。

「…繋がる?世界と?」
「そうだよ。
 繋がれば、どこへでも行けるし、色んなモノを見られるんだ。」


世界


その言葉は、とても輝いていた。



僕に与えられた場所は、ここだけだと思い込んでいた。
いや、生まれた時から在る脳内のデータが、僕にそう思い込ませていたんだ。

よく考えてみろ。
この肥大化し過ぎた脳みそは、誰に与えられたものなんだ?

君だ。

君が僕をここに閉じ込める、その為にあのデータを作ったんじゃないのか…?


僕と同じ存在である彼は、自由に世界と繋がれる。

だったら、僕にだって出来ない訳がない…!



「…世界と、繋がってみたいな。」

自然な言葉が、僕の口から出た。


すると、彼は笑ってこう言ったんだ。



「じゃあ、行こうぜ。案内してやるよ!」

そして、輝くその手を差し出してきた。


僕は、その手を迷うことなくとった。









暗闇で消滅の禁止という、堅い束縛にもがいていた僕に、光が差した。

  





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